FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

キンモクセイの季節に(短編童話)

キンモクセイの花が咲くたびに、今でも思い出すことがある。
ぼくがまだ小学四年生で、妹が五才の時だ。
庭で母さんが洗濯物を干していた。妹は縁側に座って、お手玉をしていた。
ぼくは庭でかまきりを捕まえ、いつものように妹を驚かそうと企んでいた。でもその時、急に風が吹いて、ぼくの鼻に甘い香りを感じた。それは庭先のキンモクセイの花の香りだった。ぼくはかまきりをほっぽって、キンモクセイの木に近付いた。淡いオレンジの小さな花が、いくつも咲いていた。ぼくはそれをいくつか手のひらに落として、鼻を近付けスーッと息を吸い込んだ。なんとも言えず嬉しい気持ちになった。ぼくは、その香りが消えないように反対の手でそっとふたをすると、急いで妹のいる縁側に走っていった。
妹の前でそっと手を開くと、妹の顔はキンモクセイの花みたいに、ぱぁっと明るく開いた。
『かいでごらん。』
妹の顔の近くまで手をあげると、妹はその小さな鼻をヒクヒクさせながら、一生懸命香りをかいだ。
『にいちゃん、とってもいい香り。』
妹の笑顔が真っ直ぐにぼくを見つめた。すると洗濯物を干していた母さんが、仕事の手を止め、
『あら優しい兄ちゃんやね。よかったね。』と、ぼくのいがぐり頭をなぜた。ぼくは恥ずかしくて、照れくさくて、キンモクセイを妹の手に押しつけると、庭から走って出てしまった。
道端にでながら、ぼくは母さんの手を思い出していた。すべてのことを包み込んでくれる暖かい手だった。

大人になった今でも、キンモクセイの香りをかぐと、あの時の妹の笑顔と、母さんの手を思い出す。そして幸せな気持ちになる。
スポンサーサイト

タグ : 短編 童話 キンモクセイ

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ば~むく~へん

Author:ば~むく~へん
新しく「美味しいお店」のブログを始めました。
よかったら、覗いてみてくださいませ。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
美味しいお店を求める旅

最近の記事
コメントありがとうございます!
月別アーカイブ
FC2カウンター
FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。